いつでも再出発できる自分。それが女性の自由への近道。

いつでも再出発できる自分。それが女性の自由への近道。


7年間住み慣れた街を引越した。35歳、3人目の娘がお腹にいる時から住み始めた場所。目の前が保育園で、実家が同じマンション群という育児に最適な環境だった。住めば都。窓の大きな39階の角部屋からはレインボーブリッジと東京湾が見渡せて、年に1回の花火大会は特等席で楽しむことが出来た。

去年離婚して、再びシングルマザーになって、娘が電車で通う小学生になったとたん、急にその部屋がしっくりこないものになった。断捨離をしたり模様替えをしたりしたけど、それでも違和感はぬぐい去れない。そして、新会社がある六本木までの通勤がなんともおっくうになった。

「そうだ、引越をしよう」転職をした時、起業をした時、結婚をした時、私はいつも引越をしてきた。転職先のそばに、会社のそばに、夫婦の最適な場所に、最適なサイズで。新しいスタートには、新しい環境、つまり、自分を入れる箱をまず整えた。そうするとスイッチが入るからだ。

毎回引越をするたびに部屋のグレードはあがった。でも、今回は前回の半分の広さの部屋にした。39階から3階になり、地べたに近いフロア。窓から見える景色は隣のビルだ。でも、会社には徒歩で行ける。部屋はエントランスに最も近い場所だから、タクシー乗り場だって徒歩1分。駅だって雨に濡れずに行けるほどすぐそば。周囲には友達も沢山住んでいるから寂しくない。

最低限の家具だけ置いて、準備が整った時ゼロから起業し直した、シングルの私にぴったりでしっくりきた。39階のタワーマンション引き渡し日の夜、会食の後ひっそり寄ってみた。すでに部屋はがらんどう。すべての家具を運び出した、だひとつ、友人に譲る予定の3人がけのマラルンガが残っていた。

次の部屋にはこんな大きなソファは入らない。せっかくだから、最高の夜景がよく見える位置に動かして、真っ暗な部屋の真ん中に座ってみた。急に感情が揺さぶられた。沢山の決断があって、その分沢山の悩みがあった。30代後半からの私の人生が全部この部屋に詰まっていた。

大きな喜びも、絶望するほどの悲しみも、まさに走馬灯のように映像が駆け巡る。ここで始まった幸せに満ちた新しい生活のこと、会社が苦労しながらも拡大ステージに入っていったこと、社員を呼んでバーベキューしたこと、震災があって歩いて帰ったことエ、レベーターがとまって、娘をおんぶして39階まであがったこと。

会社が上場して、夢にまでみた鐘をつくシーンが自宅のテレビに映し出された時のこと。15年もかけ、心血注ぎ、たどり着いた人生の頂点のような記念日から落ちるのは早かった。離婚を決めて、自ら創業した会社を辞めるかどうか悩んで、苦しみばかりで前に進めなかった日々は異様なほど長く感じた。

ふと、霧が晴れたように再び起業を決意して、仲間を募ってこの場所でカラーズがうまれた。オフィスがないから創業メンバーがここに出勤し、床に座って仕事したりご飯をつくってみんなで食べた日々。最後は、希望しかない楽しい時間を過ごす事が出来た。まさに、絶望も希望も、人生の大きなふり幅が全部詰まった部屋だった。

「卒業。だから引越」。そんな風に感じた。「住む場所がかわると、人生がかわる」。そんな言葉を聞いた事があるけど、次の部屋ではどんなドラマがあるのだろう。夜中に大先輩から、引越おめでとうのメール。「でも狭い部屋なんですよ。いつか、同じマンションのもっと広い部屋に引越すのが夢です(^^)」そう返すと、「そんなの楽勝だよ〜夢はもっとでっかくね☆」と即レスが。その言葉が私の心に再び灯をともしてくれた。

そう、私の周囲にはどんな暗闇にいようとも、常に無条件に励まし元気づけてくれる大人が沢山いる。だから孤独なトンネルの中でも光を見失わないで前に進んで来れたんだ。

いま、私は自分にあった新しいサイズの部屋でスイッチを入れる日々。いよいよ新たなスタートを本格的に切ったのだ。3年後の目標とイメージは明確にある。それを達成したその時、きっと私は新しい部屋を探しているのだと自分に言い聞かせながら。

いつでも再出発できる自分。
それが女性の自由への近道。


経沢香保子

Text / Kahoko Tsunezawa
DRESS 2015 11月号 P.131 掲載

経沢香保子(つねざわ かほこ)
桜蔭高校・慶應大学卒業。リクルート、楽天を経て26歳のときに自宅でトレンダーズを設立し、2012年、当時女性最年少で東証マザーズ上場。 2014年に再びカラーズを創業し、「日本にベビーシッターの文化」を広め、女性が輝く社会を実現するべく、1時間1000円~即日手配可能な 安全・安心のオンラインベビーシッターサービス「キッズライン」を運営中。オンラインサロン「女性起業家サロン」も人気。

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コラム集「経沢香保子の本音の裏側」

この記事のライター

桜蔭高校・慶應大学卒業。リクルート、楽天を経て26歳のときに自宅でトレンダーズを設立し、2012年、当時女性最年少で東証マザーズ上場。 2014年に再びキッズラインを創業し、「日本にベビーシッターの文化」を広め、女性が輝く社...

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