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生前贈与の申告と契約書の注意点。税務署に否認されないために

前回の「生前贈与で相続税を節税する方法」で、生前贈与の有効性についてお話をさせていただきました。しかし、せっかく生前贈与を行っても、贈与の要件を満たしていなければ、税務署に否認されて無効になってしまうという事例も数多くあります。今回は、せっかくの生前贈与が否認されないための注意点についてお話しします。

生前贈与の申告と契約書の注意点。税務署に否認されないために

「生前贈与」で相続税を節税する方法

https://p-dress.jp/articles/3535

相続税の支払いはできるだけ少なくしたいもの。今回は、相続税を節税するにあたって、もっとも簡単な方法である「生前贈与」について、その基本的な考え方について説明します。生前贈与とは何か、どういったメリット・デメリットがあるのかをみていきましょう。

■贈与の成立要件

まず初めに、贈与の成立要件から確認します。
贈与を成立させるためには、贈与者(財産をあげる人)から受贈者(財産を貰う人)に一方的に与えるものではなく、贈与者と受贈者の両者の意思表示が必要です。
つまり、

〇贈与者(財産をあげる人)の財産を与えるという意思表示
〇受贈者(財産を貰う人)の財産を受け取るという意思表示


この2つの意思表示があって贈与契約は成立します。
そのため、受贈者の意思を無視して一方的に贈与することはできないのです。

■贈与が成立していないため否認される例

生前贈与

よくある例として、親が子の名義で口座を作成して毎年、子名義の口座に振り込んでいるというものがありますが、その口座を親が管理している場合には、子は口座を自由に使うことができないため、贈与は成立していないことになります。

税務署からは「子の名義を借りているだけで、実質的な口座の所有者は親ですね」といって、名義預金として否認されてしまいます。

否認されないためにも、貰う側が普段使っている口座に振り込んで、使ってもらうことが否認されないためには有効です。

なお、無駄遣いをしてほしくない場合には、積立タイプの保険を活用している人もいます。

他にも専業主婦が夫から生活費を受け取り、残った金額をへそくりとして貯めているケースがありますが、これも名義預金として否認されてしまいます。

夫が生活費として妻に任せて渡していたとしても、直ちにその生活費が妻の財産になるわけではありません。

生活費は夫婦共同生活の基金としての性質を持つことになります。そのため、生活費の残った金額も妻のものにはならないのです。

仮に生活費を渡す際に「余ったお金は自由に使っていいよ」といわれていても、贈与ではないと否認されている裁決事例もあります。

そのため、妻への贈与を否認されないためには、生活費とは別に贈与をする必要があるのです。

■贈与契約書は必要か

上記「贈与の成立要件」で説明した通り、贈与を成立させるためには贈与者と受贈者の両者の意思表示があれば良いため、贈与契約書の作成は必須要件にはなっていません。

しかし、贈与があったことを立証する方法としては、贈与契約書が有効になります。また、贈与契約書を作成するタイミングは「贈与の都度」になります。

なぜ「贈与の都度」なのか、贈与契約書の書き方などについては、次回の「生前贈与が定期贈与にならない対策・注意点」で説明します。

また、仮に贈与契約書を作成していなかった場合にはどうなるのでしょうか?

税務署は追徴課税を狙ってきますので、証拠のないものについては、都合の良い解釈をして指摘してきます。

つまり、生前贈与と指摘することで追徴課税を取れるのであれば、生前贈与と指摘してきますし、贈与税の除斥期間(時効のようなもので、贈与税の除斥期間は6年間です)を過ぎているようであれば、「贈与はそもそも成立していないですね」といって、名義預金、貸付金といった名目で相続財産の計上もれを指摘してきます。

税務署から余計な否認を受けないためにも、贈与契約書は作成した方が良いでしょう。

■贈与税の申告はするべきか

年間の贈与を受けた金額が110万円を超える場合には、贈与税の申告をする必要があります。

逆に110万円以下の場合には、贈与税の申告をする必要はありませんし、贈与税の申告は贈与契約の要件になっていません。

そのため、特に贈与税の申告をしなくても贈与が無効になるわけではありませんが、あえて110万円を超える贈与をして、税務署に証拠を残すという方法も、立証する手段としては有効です。

例えば1,101,000円の贈与をして100円だけ納税することで、贈与税の申告書を税務署に提出します。しかし、注意する点としては、贈与税の申告をしたからといって贈与の証拠になるわけではありません。

あくまでも、贈与の実態があるうえで、贈与税の申告は立証力を高めるためのオマケのようなものと考えた方が良いでしょう。

また、贈与税の申告書を提出する際に、贈与契約書のコピーを添付することで、贈与契約書がバックデートで作成されたものではないことが証明できます。

仮に年間の贈与が110万円以下で贈与税の申告をしない場合には、贈与契約書の立証力を高めるために、公証役場で確定日付を取るのも良いと思います。

※確定日付とは、証書の作成日に関して、完全な証拠力があると法律上認められる日付のことをいいます。

■否認されない生前贈与をするためのまとめ

生前贈与が否認されないための注意点をまとめると

(1)貰う人が実際に使っている口座に振り込む。
(2)贈与契約書を贈与の都度、作成する。
(3)できれば贈与税の申告もする。(申告しない場合には贈与契約書の確定日付をとる)


の3点になります。

優先順位としては1→2→3になります。

絶対条件は「贈与の実態」になりますので(1)は必須です。あとは対税務署に立証するための(2)と(3)になります。

生前贈与は手軽に実行できる反面、最も税務署から否認を受けやすい論点にもなります。しかし、否認されないための対策もさほど難しいことではありません。

余計な否認を受けないためにも、上記の3点を意識することをおすすめしています。

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佐藤 和基

2007年1月に相続最大手の税理士法人レガシィに入社して相続税の業務に携わり、2010年に相続税以外の一般的な税務を学ぶため銀座にある税理士法人ワイズコンサルティングに転職。 2014年1月に独立開業した。 独立...

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