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セックスレス離婚の慰謝料に「セックスレスの権利守れ」の声

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フランス南部のニース。あるカップルの離婚訴訟がフランスだけでなく欧米を巻き込んで議論を呼びました。21年間の結婚生活中、妻(47歳)からのたび重なるセックスの願いを退けてきた夫(51歳)が、離婚慰謝料としておよそ1万ユーロ(約105万円)を払うよう判決を受けたのです。気になるのはその後の話……。

セックスレス離婚の慰謝料に「セックスレスの権利守れ」の声

■セックスレス夫婦生活の「高い」代償?

セックスレス離婚に1万ユーロの慰謝料――。

フランス南部のニースで21年間に渡る結婚生活中、度重なる妻からのセックスの願いを「健康上の理由」「疲れている」と退けてきた夫(51歳)が妻(47歳)への1万ユーロの罰金を言い渡されました。

日本人女性としてまず驚くのは、「愛の国の住人」だと思い込んでいるフランス人の男性ですら、セックスレスの人がいるのね、ということ(笑)。

そして、その慰謝料の金額が日本とフランスであまり違わない(日本のセックスレス離婚の慰謝料は100~300万円が相場)というのも、親近感が湧きます。

欧米のメディアでこれが報じられると同時に、一般参加のWeb討論などで、意外な議論を巻き起こすことになりました。

それは「裁判所が夫婦関係(セックスレス)に口を出すな」というもの。

セックスレスの自由、そしてセックスレスである権利が脚光を浴びたのです。

■「不倫」という言葉がないフランス

こちらの記事でも触れられていますが、フランスには「不倫」という言葉がないそうです。

セックスをするのもしないのも個人の自由として語られます。そのため、この「セックスレスには慰謝料を払え」という判決が、裁判所の権限を越えた個人のセックスの自由を侵すものだ、と議論になったのです。

英語にもパートナーへの裏切りを表す「浮気(cheat)」という言葉はありますが、婚外恋愛によって蔑ろにされたと憤る夫(もしくは妻)が、結婚生活を維持しながらも愛人に慰謝料を請求できる国はほとんど存在しません(離婚訴訟に発展すれば別ですが)。

一方で、不貞に対しては、どこの社会も厳しいようです。周囲からの信頼や友達を失うなどの社会的な制裁があります。表立っては語られないものの、糟糠の妻を捨て、若い娘に乗り換えたりすると、それはそれはひどいしっぺ返しを受けます。看板大スターがハリウッドで引退同然になったケースもあります。

しかし、法的な措置が夫婦関係や婚外恋愛に有無を言わさず介入する国は、それほど多くはないのです。愛情やセックスは多くの国で、あくまでも”個人の自由”として不介入の範囲とされます。

■「結婚」を深く考えるきっかけとなったセックスレス裁判

この議論の中では、欧米の人々が多くの発言をしています。

「男性が常にセックスをしたい生き物だと思うな」

「妻側がセックスを拒否することは多いのに、こんな判決は出たことがない」

「結婚したら『セックスをしない自由』は保障されないのか」

「結婚したから私とセックスしなくちゃダメ、はおかしい」

と、喧々諤々の議論が展開され、はたして結婚とは何か、結婚でのセックスの役割は何か、を改めて考える大きなきっかけとなりました。

日本においてこれらは、あまり公に大きく議論されることがないテーマです。

しかし「結婚」が法律に守られたパートナーシップであることを考えると、セックスを「結婚の権利」、そして「結婚の義務」として、社会がどこまで口出しできるか論じるのは、正しい姿勢なのかもしれません。

■セックスレスだったパートナーの老後を看取れるか?

不思議に思うのは、どうして離婚訴訟を起こした妻側は不満を抱えて21年間も一緒にいたのか、ということ。欲求が合わない同士で、そんなに長い間を過ごすのは苦痛ではなかったのか……。

そこが夫婦の不思議なところです。

女として肉体は愛されていなかった……。けれど、どこかで分かり合い、助け合える関係だったのでしょう。そうでないと21年間という長い時間をひとつ屋根の下で暮らすことは不可能だと思います。

もしくは「セックス」よりも大事にしたい「子育て」があったとか……。社会生活を乗り切るために、役割分担をした夫婦共同体だったのかもしれません。

離婚を切り出した妻が47歳という年齢だったところにも、深い共感を覚えずにいられません。まさに女性にとって、子育てが終わり、肉体的なピークも過ぎる、第二の自分探しを始める時期ですよね。

たかが肉体関係、されど肉体関係。長年触れ合わなかった夫婦がライフステージが変わっても一緒にいるという決断を下せるかどうかは、難しいのだと思います。

人生折り返し地点を過ぎたとき、女性がうっすらと感じ始めるのは「老後」だったり「介護」だったりするはずです。ほとんど触れ合わなかった男性のサポートや介護を「妻として」できるでしょうか? 

子どものように粗相をしたり、頼りなくなっていく男性を慈しんで見送る、それは夫にめいっぱい愛された妻にしかできないワザのように思われます……。

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林 晶

ライター・エディター、翻訳。1973年生まれのかに座。

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