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『エシカル・トラベルのすすめ』

今回のテーマは“エシカル・トラベル”。 決まりきった観光地に行って、美味しいものを食べてショッピングをして……。 という旅ではなく、学んだり、感動したり、誰かのためにもなる、もっと意味のある旅をご紹介したいと思います。

『エシカル・トラベルのすすめ』

『エシカル・トラベルのすすめ』

2014年も残りわずかとなりました。
年末年始のお休み、みなさんはどのように過ごされますか?
DRESSの読者のみなさんは年末年始のお休みを利用し、旅行される方も多いかと思います。

今回のテーマは“エシカル・トラベル”。

決まりきった観光地に行って、美味しいものを食べてショッピングをして……。という旅ではなく、学んだり、感動したり、誰かのためにもなる、もっと意味のある旅をご紹介したいと思います。

それは私がこの夏参加した、中国青海省の、SHOKAY(ショーケイ)のチベット族のふるさとを訪ねるスタディツアー。

SHOKAYは、チベット族の人たちが家畜として放牧しているヤクの最も柔らかい毛の部分のみを使用してニットアイテムを作っています。青海湖近くのチベット族からフェアトレードで原毛を買いつけ毛糸にしています。

スタディツアーでは、そのチベット族の、サステナブルでクリエイティブな伝統的ライフスタイルを体験し、SHOKAYをはじめ、他のチベット族を支援するソーシャル・ビジネスやNPOの活動も学んだりします。元々中国のSHOKAYが行っていたスタディツアーですが、今回、日本でも企画しました。エシカル・フォトジャーナリズムに興味のある方のために写真講座のプログラムも用意しました。

7年前に訪れた時は草原にチベット族が住む簡易ハウスが点在し、それ以外は何もなかったのですが、今では青海湖のまわりは、テント・コテージを経営する中国人も増え、観光地化され、どんどん環境が変化していました。

私たちは、ヤクの毛で作られた伝統的なテントにホームステイ。電気、水道、ガスなどのライフラインがないテント生活。チベット族にとって昔はヤクが唯一の資源であったため、ヤクの毛の手織りテントやコート、暖房や食事の火もヤクのフンを使い、ヤクのミルクはチーズやバターにしたり、ミルクティーにしていただき、その資源を無駄なく大切に活用しています。

青海湖と大草原の自然を満喫しながら、この伝統的なチベット的暮らしを日本人にも体験してもらいたく企画した旅でした。

ヤクの乳搾りやバター作り、乗馬、SHOKAYの工房での手つむぎ毛糸作り……。そしてチベット族の伝統的な衣裳を着て写真を撮る”コスプレ・タイム”も用意しました。^^

私の中の”エシカル消費”の定義は、「世の中が良い方向へ進むよう、お金がより良い方向に循環するよう意識的にお金を使うこと」。そして、「こうなってほしいと思い描く未来が実現するために、自分が共感する思いや活動に対して応援の1票を投じる自己表現でありアクション」でもあります。またそれは、“心も豊かにしてくれる消費行動”でもあります。日々の暮らしの衣食住に関するモノやサービスもそうですが、旅をする際も同じように考えたいものです。

今、青海省のチベット族を取り巻く問題としては、より多くの収入を求めて、伝統的な遊牧民生活を捨て、都会に出稼ぎに行く人が多かったり、
ヤクを自由に放牧できるエリアが制限され、さらに政府の定住化政策により、ヤクを手放す人も増えていると聞きます。

そんな中、この旅に参加するという行為自体が、消えつつあるチベット族の伝統的な暮らしを再評価し、大切にしてもらえるよう世界中から応援していることを、チベット族の人たち、また中国人の人たちに知ってもらう良い機会になっているのではないかと思いました。小さな力ではあるけれど、とても重要なことだと今回訪れて再認識しました。

SHOKAY本社のチベット人コーディネーターや、道中、カメラ撮影方法を教えてくれたフォトグラファー、チベット語で教える小学校が閉鎖されてしまったため、先生から転身しチャーターバスの運転手となった男性、中国のチベット族定住化政策のコミュニティで生き甲斐を失った高齢者を支援するソーシャル・ビジネスを立ち上げたチベット人の女性など、今回のスタディツアーでは、心優しいチベット人の方々との出会いがありました。

普通の観光旅行と違い、こういった現地の人々との交流もこのようなスタディツアーの醍醐味です。今回日本から参加してくださった方々からも「チベット族の人たちの優しさに感動した」「日本には伝えられないことがここに来てよくわかった」「人生観が変わった」といった言葉をいただきました。

このようなスタディツアー、最近、いくつかの旅行会社で実施されています。
ぜひ機会を作って体験してみてください!



『H.I.S ボランティア・スタディツアー』
http://eco.his-j.com/volunteer/

『リボーン』
http://reborn-japan.com/category/overseas

『スタディツアーPASSPORT 〜NGO スタディツアー・ワークキャンプガイド』
http://ngo-studytour.jp

Photo By Kana Takashima

林 民子

NPOソーシャル コンシェルジュ主宰。ジャンルを超え、社会貢献度の高いヒト、モノ、サービスをより魅力的により多くの人へ広めるための様々なプロジェクトをプロデュース。少数民族の貧困解決を目指し、上質のヤクという素材にフォーカス...

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