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“2番目の女”という存在についての考察、あるいは男女の距離感を図るモノサシとしての音楽

セックスフレンドと恋人という似て非なる距離感。この2つの距離感を女性自身が自覚し、自分の意志で調整できるようになる術を、男性の目線から語るのは無駄なことではないのではと、ぼくは思う。

“2番目の女”という存在についての考察、あるいは男女の距離感を図るモノサシとしての音楽

『東京におけるセックスフレンドや恋人のなにがし(またはそれに似た情事)について聞いて書いた。』というアルバムが2月22日に発売される。このちょっと長くて刺激的なタイトルには、2つの男女の距離が言明されている。

「セックスフレンド」と「恋人」だ。セックスフレンドと恋人、どちらの関係もそれぞれに魅力的なのはもちろんなんだけど、大切なのは当事者がそれを意識して選び、望んだ関係を結ぶことだ。

恋人になりたい相手とセックスフレンドになってしまったらそれは悲劇だし、セックスフレンドになりたい相手と恋人になってしまったらそれはハリウッド映画だ。

■「2番目の女」は順位じゃなくてジャンルだ

昔、あるたいへんおモテになる男性の「2番目の女性」を長い間務めていた友人から相談を受けたことがある。

「たいへんおモテになる男性が、彼女と別れてくれたの! 今がチャンスだよね、どんなふうに接してあげたらいいかな?」

悲しいほどに切実で実直な愛すべき女友達は、男女関係に関するとても大事なことを学ばないまま大人になってしまったようだ。

「2番目の女」というとき、その「2番目」は順番ではない、ジャンルだ。ぼくの愛すべき友人は、たいへんおモテになる男性にとって「2番目の女」というジャンルではすでに1位だったのかもしれない(正直、それも怪しいけれど)。

だが、「彼女」というジャンルにはエントリーもしていない。「彼女」のナンバーワンランカーが脱落したことは、一途で不器用なぼくの友人の人生におそらくなんの変化ももたらさない。

マラソンのトップランナーがレースに脱落したところで、隣の会場で必死にハードルを飛び越えている障害物競争の走者が表彰されることなんてない。

男性は時に卑怯だから、そして多くの場合バカだから、相手の女性に恋人なのか、セックスフレンドなのか、その立場を錯覚させたり、混同させたりしてしまう。

女性がセックスフレンドと恋人の2つの距離感をはっきり意識し、自分が彼にとってどちらの立ち位置にいられるタイプなのか自覚し、調整できるようになる術を、男性の目線から語るのは無駄なことではないように思う。

もちろん、セックスフレンドなんて関係、吐き気を催すわ……純愛以外に適切な男女の関係なんてないよ! と思われる方もいらっしゃるとは思うのですが、そんな方にこそ気をつけていただきたい。人は目的地を見失ったときではなく、自分のいる場所を見失ったときに迷うもの。

この2つの似て非なる関係について、その距離感を絶妙に描いたモノサシになるような音楽が2つある。1つは、「恋人」について描いた楽曲『愛はオシャレじゃない』。

■「愛はオシャレじゃない」という少年の叫び

岡村靖幸という天才シンガーソングライターがバンドBase Ball Bearのボーカルである小出祐介とコラボレーションして仕上げた名曲だ。

岡村靖幸さんの太くて男らしいのに、どこか子供のような素直な喜びに満ちた声がポップなメロディの中で自由に泳ぐ。恋する喜びに満ち溢れた1曲。

“モテたいぜ君にだけに”と切実な思いを吐露し、“カーテン開くようにスカートを脱がしたい”“好きな食べ物と特技は君と書きたい”と愛情と欲望をさらけ出し、“愛はオシャレじゃない”と自らに言い聞かせるかのごとく何度も歌い上げる。

特筆すべきは、この楽曲が2016年、岡村靖幸さんが49歳のときにリリースされた楽曲だということ。

作詞が当時30歳の小出祐介さんだということを知りつつも、この歌詞、この楽曲に全体重を乗っけて歌い上げる岡村さんの暴力的なほどの無邪気さに、鳥肌が立ってしまう。まるで、14歳の中学生が初恋にときめいているかのような心情描写。

そう、恋人とは、意識せずとも意識せざるとも、男を子供にしてしまう、破壊力のある存在なのだ。

何度恋を繰り返しても、何年この世界に生きていようとも、どれだけ仕事で成果を出していようとも、どんなにお金があっても、あるいは別の誰かと結婚していたとしても……恋をした瞬間、男は子供に返ってしまう。

あなたにもしも、大切な人がいるのだとしたら、その人が自分の前で、子供でいてくれているか、自分が子供でいさせてあげられているかを、確かめてみるといいだろう。

■「共犯者になってよ」という女子の願い

一方「セックスフレンド」について描いた楽曲で特筆すべきなのが、冒頭でも紹介したアルバム『東京におけるセックスフレンドや恋人のなにがし(またはそれに似た情事)について聞いて書いた。』に収録された楽曲『共犯者』だ。

白神真志朗というアーティストがタイトル通り「昨今の都会における様々な女性の恋愛」をルポライター的に描いた5曲の音楽短篇集だという。

出会い系アプリで知り合った妻子持ちの男性との生々しい不倫の心情が描写されている。
ファルセットを多用した白神さんの声はうっすらと切なさを感じさせつつも、乾いていて、どこか他人事について話しているような感覚を与える。

救いようのない男女関係について語っているにも関わらず、ポップでリズミカルに聴いていられるのは、あくまで音楽のルポルタージュという形式だからだろうか。

女性の視点で、おそらくはセックスフレンドであろう男性に対して“共犯者になってよ”と何度も何度も呼びかける。

その声は切実で懇願に近いが、女性はそれを認めようとはしないのだ。“今だけでいいの のめり込んだりなんかしないよ”とルールをわかっていることをアピールし、“大人のふりをしようよ”なんて一見対等な関係を要請してくる。しかし、彼女はすぐに“なんで少し甘えただけで白けた顔で目を逸らすの”なんて答えのわかりきった問いかけをしてくる。

結局は“惨憺たる気分を捨てる場所”を探して、“最低な関係を砂糖で覆い隠して舐めてるんだ”と楽しかったであろう記憶を勝手に塗り替えてしまう。

“大人のふりをしようよ”この言葉にすべてが表れている。この女性は大人になんてなれていないのだ。大人のふりは子供しかしない。この女性は子供のまま、栄養のない砂糖菓子をねだるように“暫定の穴埋めの相手”を探す女子なのだ。

しかし、残念なことに、相手の男性は大人だ。大人は子供の遊びに最初は付き合ってくれるかもしれないが、いつかは遊び場を離れてしまう。仕事もあるし、家族だってあるからね。

“共犯者”という言葉はもっと残酷だ。古くは『走れメロス』から『ルパン三世』『オーシャンズシリーズ』いずれの物語においても、本当の絆に結ばれた共犯者たちは、“俺たちは共犯者だよね”なんて確認をすることはない。共犯関係をわざわざ言葉で確認するヤツは大体最後には企みが露見して痛い目に遭う裏切り者と相場が決まっている。

そう、この楽曲を通して伝わってくるのは男女の非対称性だ。男性は大人で、女性は子供。先に語ったように男性が本気の恋に落ちるとき、彼は一瞬で無邪気な少年になってしまう。

再び『愛はオシャレじゃない』の歌詞から引くならば、“君と同じ口紅つけたならその唇が何味かわかるのかな”なんて幼稚な妄想を本気でしてしまうくらいに。もちろん家族や仕事もその瞬間はすべて頭の中から吹っ飛んでしまう。恋とは、そういうものだ。

■甘やかす&たしなめる、2つのバランスをうまくとり、男性を子供に返らせる存在に

いよいよここで、結論めいたことを言うが、世の女性にはその年齢を問わず、男性を子供にしてあげられる、そんな存在でいることをおすすめしたい(むしろ懇願に近い)。

そのために必要なのは甘やかすことと、たしなめることのバランスだ。男性は、その2つの力の綱引きによって、「あぁ、この人は俺のことをなんてわかってくれるんだ」と錯覚して一瞬で子供に返ってしまったりする。

もちろんそのバランスは難しいんだけど、各自傷つきながらでも学んでもらうしかない。そのためにもこの岡村靖幸さんと白神真志朗さんの楽曲を聴き比べてイメトレを重ねてみるのもいいだろう。

恋する相手を思い、一瞬で子供に戻ってしまう熟練のアーティストと、大人のふりをしようと懇願する女性を冷めた目で突き放す若きアーティスト。2人のコントラストは、恋人とセックスフレンドの温度差に近い。

ちなみに、男女関係の類型でいうならば、もっともっと一般的な「夫婦」という関係についても、語った方がいいのかもしれない。でも残念ながら僕にはそれはできない。

哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの言葉を借りるまでもなく、「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」から。

そろそろ紙幅も尽きてきた。この冗長な原稿が少しでも誰かの役に立っていればいいのだけど。ネット時代の常套句で締めくくろう。

文中に登場する人物、事件、その他一切の内容は筆者の想像によるもので実在の人物、出来事を指すものではありません……なんてね。



三浦 崇宏

踊れるタイプの良く喋るデブ。

The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/CreativeDirector 株式会社クリエーターエージェント 取締役 プロデューサー 渋谷区観光協会プロデューサー 太った男性のためのファ...

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