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「水洗い不可」のカシミヤセーターを手洗いしてみた

「水洗い不可」のマークがついているカシミヤのセーター。そのマークは「洗濯できない」ってことを意味するのでしょうか? クリーニングに出さなくても、洗い方次第で自宅でも手洗いが可能かどうか? 2種類の洗剤を使って、水洗いできないニットを手洗いしてみました。

「水洗い不可」のカシミヤセーターを手洗いしてみた

冷え込む日が多くなると、あたたかニットの出番が増えます。

カシミヤセーターの触り心地や暖かさは極上……なのはわかっているけど、クリーニングやお手入れが面倒で敬遠している方もいるのでは? そこで今日はカシミヤセーターを表示の指示通りに洗わなかったらどうなるか、実験してみました。

■洗濯絵表示、信じる? 信じない?

どんな服にも必ず、服の内側左についている「洗濯絵表示」。

家庭用品品質表示法に則って、洗濯に関する注意書きの記号が記されています。そしてたいていのカシミヤ製品は、「水洗い不可」になっています。

ところが、ライオン株式会社のHPでは「“水洗いができない”マークの衣料でも、アクロンで洗えるものがあります」(※1)と書いてありますし、パナソニック株式会社のHPでは「“水洗い不可”のマークは、素材・加工によっては、洗えるものがあります」(※2)との表記が。


いったいどちらを信じればいいのでしょう!? そこで、水洗い不可の洗濯絵表示(※3)がついたカシミヤのセーターを、表示を無視して洗ってみることにしました。

※1 「LION 公式ホームページ」

※2 「Panasonic 公式ホームページ」

※3 家庭用品品質表示法に基づく繊維製品品質表示規程が2015年3月に改正されたことを受けて、2016年12月から衣類等の繊維製品の洗濯表示は新しい日本工業規格L0001にならったものに変更されています。

■カシミアのセーターを、2種類の洗剤で手洗いして比較

ライオンの「アクロン」と、ザ・ランドレスの「ウールカシミヤシャンプー」で、カシミヤセーターを洗ってみました。手洗いの手順は、以下のとおりです。


1.大きめの洗面器などに、水(水温20℃程度)と洗剤を入れてよく泡立て、その中にセーターを入れて押し洗いします。長時間洗ったり、激しくセーターをこすったりすると、傷みの原因になりますの注意して。


2.きれいにたたんで洗濯ネットに入れ、洗濯機で1分間脱水します。これも短時間が基本です。ねじってぞうきん絞りをしてしまうと、型崩れの原因になります。


3.セーターを平らで硬いものの上に置き、手できれいにしわを伸ばして形を整えていきます(手アイロン)。


4.形が整ったら、風通しのよい日陰で平干しし、自然乾燥します。私はIKEAのタオル干しを使っています。

IKEAのタオル干しで平干し

*結果*

この方法で洗濯しても、縮みや変形、表面の毛羽立ちなどは、まったくありませんでした。ウエストと袖口のリブ部分はキュッとしまった感じになりますが、着ると元通りになるので、無理に広げようとしなくてかまいません。


「アクロン」と「ザ・ランドレス」の違いですが、ランドレスのほうは多少泡立ちがよかったのと、シダーの香りがついていました。また、ランドレスのほうはコカミドプロピルペタインという柔軟剤が入っているため、リンス効果があるようですが、アクロンもランドレスも洗濯後の触った感じは、そう大差はないように感じました。

ランドレスは液体がどろっとしていて、キャップに目盛りもついていないので、1回分の分量を正確に出そうとしても測りづらいです。また、1回の使用量はランドレスのほうが少なくてすみますが、475mlで3450円なので、ちょっと割高かもしれません。

■アパレル業界が洗濯絵表示についてハッキリ書けない事情

もちろん、ジャケットやコートなどの重衣料は手洗いできないものも多いですが、主にニット類は「手洗いはできない」と表示されていても、正しい方法で洗濯すれば、手洗いできるものもたくさんあります。

「だったら、最初からそう書いてよ!」と言いたいところですが、これには業界の裏事情があるんです。

アパレルメーカーの中には、品質事故を避けるため、服の素材を検査する独立した部門を持っている会社もあれば、専門の機関に検査を外注している会社もあります。私がいた会社もそのような専門部署があり、布地が色落ちしないか、縮まないかなどをきちんと検査し、洗濯絵表示についても、服を作る部署に指示していました。

ところがみなさんご存知のとおり、ワンシーズンには何百何千型もの服が市場で販売されます。素材の種類もかなりの数にのぼるわけで、流行の移り変わりの激しいなか、それらを全部検査してから販売することは難しいのです。

また、「洗濯できる」と表示してしまった場合、正しい洗濯方法通りに洗わなかったばかりに服が著しく傷んでしまう、といったこともありえます。

私も以前、「ちょっと触っただけで、こんなになったんやけど、どないしてくれるん?」と、毛玉だらけのセーターを持ち込んで怒っているお客さまを見かけたことがあります。会社としてはどうしてもリスク回避の方向に向かわざるを得ないのです。

■水洗い不可は「水洗いできないかも」くらいで考える

こうした大人の事情をわかった上で、「水洗いできません」は「水洗いできないかもしれないです」くらいに考えるのがいいでしょう。

くれぐれも、洗濯絵表示を見なくていい、というわけではありませんよ。しっかり確認した上で、正しい洗い方をしてください。手洗い初心者の方は、傷んでしまったニットから試してみるのもいいですね。ただしあくまで自己責任でお願いします。

ニットの場合、風合いを保つためには、お洗濯よりも毛玉とりや毛羽立ちを抑えることも大切なので、よろしければこちらの記事「毛玉のことは嫌いでも、カシミヤのことは嫌いにならないでください!」もあわせてご覧ください。

洗濯絵表示はきちんと確認し、半分信じて半分疑おう。

▷こちらもおすすめ:「毛玉のことは嫌いでも、カシミヤのことは嫌いにならないでください!」

※ この記事は2017年4月2日に公開されたものです。

輪湖 もなみ

ワードローブコンサルタント/リメイクデザイナー 大手アパレルで16年間ブランド管理や店頭指導などに携わる。長年培ったノウハウを個人のクローゼットに応用し、毎日着る服がないと悩み断捨離を繰り返す人を救うため、クローゼットコン...

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